2011年6月25日土曜日

7月例会のお知らせ

■□西洋近現代史研究会7月例会ワークショップのお知らせ□■
「遅れて来た」植民者――日本・ドイツの植民地経験への問い

日時:2011年7月30日(土)13時~17時30分
会場:専修大学神田校舎7号館(大学院棟)8階782教室

□大久保由理氏
「南進」する日本人:その模範的人物像の形成と実践――第一次世界大戦前後の南進論と戦時南方移民(仮)

□柴田暖子氏
Weissheit und Deutschtum――第一次世界大戦前後の南西アフリカにおける白人社会の変化(仮)

□コメント:崎山直樹氏

■趣旨
 1989年に発表した論文のなかで、アン・ローラ・ストーラーは、植民地主義的なカテゴリーの再考を訴えた。以降の20年間、植民地社会の文化にかんする研究が積み重ねられている。いま一度、ストーラー論文の要点を確認すれば、「ヨーロッパ人」もしくは「白人」という一枚岩的な文化表象に対する批判であり、その表象が植民地社会における支配の制度化と不可分に形成されていったことにある。いいかえれば、植民者の一枚岩的な表象は、その社会に埋め込まれた制度とそこに生きた人びとの実践の産物であり、かつ身体的な経験として実感をともなって発現したものであった。民族もしくは人種のカテゴリーによって、被支配者を均質化し差別化する過程は、同時にあるべき支配者を鋳造し鍛え上げる過程であったといえよう。ポストコロニアル研究は、植民地支配によって形成された様々な分断を乗り越えるために、支配/被支配の区分の二律背反性を鋭く問い直してきたが、同時に、その区分が身体的な経験によっていかに強化されてきたかを再構成することも、いまなお重要な作業であろう。
 本ワークショップでは、支配実践と不可分であった植民者像の形成過程を、日本とドイツの事例を取り上げて考察する。日本とドイツは、ともに19世紀末の帝国主義の時代に、「遅れて来た」植民地帝国の一員として国際舞台に登場し、先行したスペイン・ポルトガル・オランダ・イギリス・フランスの植民地支配を観察しながら、自らの支配実践を積み上げてきた。まず大久保由理氏の報告では、戦前期日本の「南進」政策の思想的背景が概観された後に、太平洋戦争期に結晶化されていった、東南アジア占領政策のなかでのあるべき「日本人」模範像の具体的な実態が検討される。そこでは、個々の人間があるべき「日本人」としていかに訓練され、そして占領の現実に直面する過程で、どのように自己像が改変(あるいは強化)されていったのかが問われることになるだろう。次に、柴田暖子氏は、第一次世界大戦後に南アフリカ連邦の委任統治下に置かれることになった旧ドイツ領南西アフリカの「ドイツ人」の事例を取り上げる。第一次大戦前には植民地支配者として君臨した「ドイツ人」は、戦後には「敗者」になると同時に、アフリカ南部地域の白人支配体制の一翼を担うことになった。ここでは、教育制度をめぐる白人支配者間の差別意識に焦点をあてながら、植民地支配の重層性の具体的なあり様が検討されることになる。そして、アイルランド・ナショナリズム研究の崎山直樹氏からのコメントを得たうえで、会場参加者との討論を行う。

■参考文献
Ann Laura Stoler, Rethinking Colonial Categories: European Communities and the Boundaries of Rule, in: Comparative Studies in Society and History, Vol. 31, No. 1 (January 1989), pp. 134-161.

大久保由理「『移民』から『拓士』へ――拓南塾にみる拓務省の南方移民政策」『年報日本現代史 「帝国」と植民地――「大日本帝国」崩壊60年』第10号、2005年5月、85-121頁。

柴田暖子「第一次世界大戦後の南西アフリカとドイツ系移民」『Discussion Paper Series』(Centre for New European Research、21世紀COEプログラム・ヨーロッパの革新的研究拠点、
一橋大学)第31号、2007年11月(http://133.46.124.2:8181/discussionpapers-ja/031Shibata)。

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